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  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

動脈瘤の流体解析(何を比べているのか?)

更新日:2020年11月9日

前回の論文もそうだが、未破裂脳動脈瘤と破裂脳動脈瘤を比べるという研究の評価は難しい。

たとえば流体力学を用いて、未破裂動脈瘤が出血するリスクを評価するという研究が、どこの大学でも誰かがやっている(印象)。


脳血管撮影やCTアンギオで得られた動脈瘤の三次元データを用いて、動脈瘤の壁にかかる”ずり応力”などのパラメータを算出する方法だ。

そこで、どういう動脈瘤が危ないのか?どのパラメータが重要なのか?を調べるのだが、ここで悩ましい問題が起こってくるように思われる。


つまり、何と何を比べれば、危険な動脈瘤が分かるのか?


例えば、未破裂脳動脈瘤として見つかった動脈瘤と、くも膜下出血で見つかった動脈瘤(の出血した部分)を比べて、くも膜下出血(の出血部分)で変化しているパラメータが危険因子なのでは?という研究を行うことになる訳だ。


脳動脈瘤, 治療
画はキレイだけど...


論文を読んだり、発表を聴いていると、綺麗なムービーも手伝って、確かに危なそうに思えてくる。


しかし、冷静に考えてみると、「じゃあ、その未破裂脳動脈瘤で見つかって、パラメータの値としては安全そうに見える動脈瘤は、治療しないで経過を見ていいのだろうか?」というと、それなりの大きさがあって、不整形だったりすれば、やっぱり治療されているだろう。


自分が患者でも、治療を希望すると思う。


つまり、未破裂動脈瘤として発見され、その研究ではリスクが高いとは言えない、という動脈瘤もやっぱり「無視できない出血のリスクがあるから」治療されてしまう訳であり、「”ずり応力”(もしくは他のパラメータ)が高いから治療しなくて良い」とはいいにくい。


研究によって、例えば「”ずり応力”が低い方が出血しやすい」、「いや、高い方が出血しやすい」、「いやいや、そうではなくて別のxxが重要な因子だ」と、結論が異なっているのも、そういう研究デザインの難しさが影響しているのではないだろうか。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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