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  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

成人もやもや病と認知機能

岩手医大 小笠原先生らの論文


Neurosurgery. 2018 May 30.


虚血発症のもやもや病で、misery perfusion がないもやもや病の患者さんは2年経過では認知機能の低下は見られなかったというもの。


子供にもやもや病が見つかった場合は、外科的治療を行わなければ高率に認知機能の低下を来す。

結果的に就学・就労に大きなハンディキャップになるため、手術治療を行わないという選択肢は原則ないと言える。


しかし、成人してから軽い虚血症状(軽い脳梗塞や一過性脳虚血発作)で診断がついた場合はどうなのか?という点は分かっていない

動脈硬化で内頚動脈や中大脳動脈が閉塞している場合には、PETやSPECTを用いて脳血流を調べ、misery perfusionが認められる場合には、血行再建術(バイパス手術)をお勧めしているが、もやもや病でも同じ基準でよいのかどうかは分かっていない。

しかも、もやもや病は進行することが知られているので、同じ基準での治療だと”とりこぼし”が増える可能性がある。


そこで著者らは、PET検査でmisery perfusionが見られなかった患者さん70人(平均得例42±7歳)をアスピリンなどの内科的治療のみで2年間観察した。

その結果、

  • 新たに虚血症状を起こしたのは2人(3%)だけで、PETでもmisary perfusionを呈していた。

  • 他の68人は2年後のPETでもmisery perfusionは見られなかった。

  • 初回と2年目に認知機能検査を行った66人では、認知機能の低下が見られなかった。

もやもや病で虚血症状があれば、原則手術をお勧めするべきだと思っているが、それでもSPECTで検査するとあまり血流が落ちていないという方は結構な頻度でいる。

このような方に、外科治療を勧めるべきかどうかは非常に迷うところ。

この論文の結果は「内科的治療を行って経過を見るのが妥当」ということであり、説明する際に有力な根拠になる。


2年間の経過観察であり、患者さんの平均年齢(調査開始時)が42歳と若いことを考えると、この先の経過を見る期間の長さも気になるところだ。

ただ、2年目のPET検査でmisery perfuisonが見られなかっただけでなく、新たに症状が出た患者さん以外ではCBF(脳血流)が増加していた。(つまり自然に良くなっていた)

3%(2人/70人)の方で新たな虚血症状が出て、バイパス手術が行われたと言うことだが、この虚血症状も軽いものだった様子。

結局、misery perfusionが無い方では、子供のもやもや病のような、いきなり大きな梗塞を起こすことが稀なのかもしれない。


注意が必要なのは、もやもや病では、異常に発達した血管(もやもや血管)が出血の原因になる可能性があるので、出血リスクに関しても知りたいところだが、この70人の患者さんでは出血した方はいなかったようだ。


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年間3%と効くと、未破裂脳動脈瘤や脳動静脈奇形の出血率(2%/年)との比較から、「頻度としては高いのでやはり手術するべきでは?」という意見も出そうだ。 

しかし、出血すると生命に関わる脳動脈瘤や動静脈奇形と異なり、虚血症状が出現しても症状が軽い(可能性が高い)のであれば、やはり経過観察が第一選択になるだろう。


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著者らは”PETでmisery perfusionが見られたら、新たな虚血症状を出す危険性が高いので、脳血流をよく調べるべきだ”と述べている。

それは、科学的には正しいのだが、PETにせよSPECTにせよ、検査時間と検査コストの問題が大きい。負荷試験のストレスもあり、なかなか繰り返し行うことは難しい。

実際には新たな虚血症状→検査で確認という形が妥当になるのではないだろうか。


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