「マッキンゼー 世界を操る権力の正体」
Amazonでタイトルが紹介されてきたとき、誰が読みたいと思う本だろう?と思いながら、結局読んでしまうのですが、マッキンゼー本、昔から好きなのです。
今や書店に行けば、マッキンゼーの真面目な経営に関わる本や、元マッキンゼーコンサルタントによる「仕事術」みたいな本がたくさんあります。
しかし、日本のマッキンゼー本の”はしり”といえば、やはり大前研一さんで、00年頃、会津に赴任してすぐの圧倒的に(手技が)できない時に、「サラリーマン・サバイバル」という本に出会ったのが最初で、「世の中には頭の良い人がいるんだなあ」と思いながら、読んでいたものです。
脳外科医としての能力が低かったこともあり、戦略コンサルという仕事に憧れた時期もありました。調べてみると、当時も実際に大学の先輩医師の中にもマッキンゼーに入って、その後、起業したり大学病院のスタッフに戻ったりという方もいました。
結局、転職するまでの気合いも無く、ベスト&ブライティストでもないしなぁ、というのと、人並みに手術ができるようになったので今に至るわけですが、その後もバーバラミントのピラミッドストラクチャーなど、結構長期的に役に立ったなあというマッキンゼー本もあります。
よく言われることですが、医療にはどう考えても非効率な部分があり、(なんとかならんのかな)と日々思うわけですが、理詰めで合理的に考えて答え(提案)を出すという仕事は面白そうに思えます。
それに頭の切れる人と働くのは刺激になって楽しいものです。
NTT東日本関東病院で一緒に働いた豊田剛一郎君は、頭の回転が速く、(僕と違って)コミュニケーション能力も高い人で、「この規模の病院が狭い地域にいくつもあって、そのせいで何人もの脳外科医が当直しているのって社会的に無駄ですよね」みたいな話をよくしていましたが、「そういうのを改善できるのって行政とか、コンサルとかじゃないのかな?豊田、向いているんじゃない?」という話から、実際にマッキンゼーに入ったりして、その後も(スキャンダルはともかく)活躍しているのを見て、僕のマッキンゼー熱はほぼ無くなったのでした。
で、この「権力の正体」ですが、さすが最強の戦略コンサルファームというだけあって、世界中の様々な組織にコンサルティングを行っていて、それは利益相反があるのでは?ということや、パーデューファーマのオキシコンチンのように、分析力を多くの人にとって『悪』と思われる方向に使われているという話です。
これらのストーリーはそれぞれ興味深いのですが、多くの場合に財務を改善させるには、結局人を減らして、外注できるところは外注するしかない(その外注先もマッキンゼーがコンサルティングしていたりする)。
しかしその結果として、暗黙知が失われる場合もあり、労働環境の悪化に繋がることが多々あるというところでしょう。
昨今、特に都内の病院にもコンサルティング会社が入って経営改善の名の下に合理化を進めていたりしますが、患者サービスはある程度犠牲になっているところも見聞きするところです。
本題とは逸れますが、外科系診療科にとっては、成績を犠牲にせずに医師の働き方を改革するには、病院を集めて集約化するしか方法は無いと思います。
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で、「結局、誰がこの本読むの?」と思ったとき、自分のような、(ちょっと戦略コンサルファームもいいな)と思っていたような人が読んで、(酸っぱいブドウ)感を得て溜飲を下げる、という楽しみ方もあるのかな、という印象を途中から持ちながら読みました。
そしてこんな内容のブログ、誰が読むの...?
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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