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脳外科の手術、入院期間は何日必要?-「医学的限界」と「制度の仕組み」

  • 執筆者の写真: 木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター
    木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター
  • 7 日前
  • 読了時間: 5分

手術を考えている患者さんから最も多く受ける質問の一つが、「何日くらい入院するんですか?」というものです。


仕事や家庭の調整が必要な皆さんにとって、入院日数は死活問題のはずです。

しかし、必要な入院日数について詳しく書かれた情報は多くありません。


実は入院日数には、「医学的にどうしても必要な期間」、「日本の医療制度(病院に入るお金の仕組み)」という2つの側面があります。

今回はその裏側を少し詳しくお話しします。


アメリカは「翌日退院」が当たり前?


「アメリカでは手術の翌日に退院させられる」という話を聞いたことがあるかもしれません。

実際、入院は当日の早朝、退院は翌日というケースは多いです。


しかし患者さんは退院後そのまま自宅に帰るわけではなく、病院近くのホテルに滞在しながら外来に通うのが一般的なようです。


これは、アメリカの(手術や処置を除いた)”入院費”が日本とは比較にならないほど高額で、保険会社が極めて短い日数分しか費用をカバーしないという切実な事情があるためです。


日本の入院日数を決める「DPC」というルール


一方、日本では1日あたりの入院費用が非常に低く抑えられており、米国のような「追い出される」感覚はほとんどないと思います。


ここで、少しだけ病院経営の裏側に触れます。

日本の多くの病院ではDPC(診断群分類別包括評価)という仕組みが導入されています。

これは「この病気なら、入院期間○日目まではいくら」と、あらかじめパッケージ料金が決まっている制度です。

例えば、未破裂脳動脈瘤の場合:

  • 入院〜7日目まで:約3.5万円/日

  • 8日〜14日目まで:約1.8万円/日

  • それ以降:さらに減額

    脳外科手術, 未破裂動脈瘤, 三叉神経痛, 顔面痙攣
    1日あたりの費用は病院の区分(大学病院など)によって異なります。

病院側の経営視点で見れば、14日目まで入院していただくのが「効率が良い」と言えるかもしれません。

(14日も入院していると手術目的の患者さんが溢れてしまうような場合は、別の話になります。)


しかし、必要のない入院を長引かせることは、患者さんのストレスになるだけでなく、貴重な保険料(ほぼ税金)の無駄遣いにも繋がってしまいます。


医学的に見た「退院の目安」とは


では、純粋に医学的な視点だけで考えた場合、いつ退院できるのでしょうか。 開頭手術(三叉神経痛や未破裂動脈瘤など)の場合、大きな指標は以下の5つです。


  1. 食事がしっかり摂れる 開頭手術の場合は術後は食欲が無いことが多いです。

  2. 身の回りのことが自分でできる 洗髪・整容など(3日目くらい)

  3. 抜糸が終わっている

  4. 家庭生活が送れる状態である

  5. 復職できる


通常、手術の傷を縫った糸やステープラーを抜くのは「術後7日目ころ」が一般的です。

(糖尿病などがあるとキズの治りが遅いため、長くなります)

そのため、「抜糸が終わったら退院」という流れが、多くの病院で標準的なタイミングとなっています。


ただ、身の回りのことができるようになってから、抜糸が終わるまでは間が空いてしまいます。

病院でただ寝ているだけだったら、家に帰りたいと思う方も一定頻度いらっしゃいます。

(病院にいる方が専門職がたくさんいるので安心という方も当然いらっしゃいます)


残念ながら「退院=元通り」ではありません


退院後の外来で、患者さんからよく伺う言葉があります。

「家事や仕事はできているけれど、疲れやすいです。帰宅すると、まずは一度横になりたいと思う」


私自身、大きな手術を受けた経験はありませんが、当直明けに外来が立て込み、ヘトヘトになって帰宅したとき、「とりあえずベッドに倒れ込みたい」と感じます。


開頭手術という大きな山を乗り越えた患者さんの疲労感は、それ以上のはずです。


特に、退院したらすぐに家事全般を担わなければならない主婦(主夫)の方などの場合、無理に早期退院するよりも、病院で抜糸までゆっくり過ごされる方が「安楽」な場合もあります。


つまり、病院といういまいち安らげないけど医療者は多いという環境で過ごすか、早めに帰って家にいる方が楽か、という選択肢が本来はあるべきで、それは一人一人異なる可能性があるわけです。


当院が提案する「入院期間5日」の選択肢


このように、入院日数は患者さんを取り巻く環境(サポートしてくれる家族の有無など)によって最適解が異なります。


ここで宣伝ではありますが、当院では、患者さん一人ひとりのご希望に合わせ、最短5日間(木曜入院、金曜手術、月曜退院)というスケジュールも実施しています。


  • 対象疾患: 三叉神経痛、片側顔面痙攣、未破裂脳動脈瘤など

  • 条件: 月曜日に創部を確認し、抜糸は後日外来で行う。


「一刻も早く住み慣れた家に帰りたい」という方や、「サポート体制が整っている」、(病院より六本木辺りのホテルに滞在したい(?))という方は、ご相談ください。

(もちろん手術が問題なく終わる前提の話にはなります。)


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)


*特に大学病院などでは、手術前に血管撮影検査が必要などで、手術前に1週間入院みたいなこともまだあると思います。

手術前にどれくらいの情報が必要かは、術者や病院の方針による部分もありますので、あくまで"私は"こう考えている、ということです。

 

 

 
 
 

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