顔面痙攣、私はどうしたらいいんでしょう?
- 木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

- 4 日前
- 読了時間: 4分
脳外科では(重症)くも膜下出血や、心臓からの血栓で起こる脳梗塞(心原性脳梗塞)など、外科的治療(=手術)が一刻を争う病気が、数としては多いのですが、脳腫瘍など、予定を組んで行うタイプの治療もあります。
脳腫瘍の場合、例えばMRIで悪性腫瘍の可能性が高い場合、数週単位で症状が悪化することが予想されるため、早めの手術を予定することも多いです。
一方、髄膜腫などの良性腫瘍の可能性が高い場合には、もっと経過は遅いため
「夏ぐらいまでには治療する方が良いかもしれませんね」
とか
「数年以内には何らかの症状が出てくると思います」
くらいの、時間感覚で予定を考えていただくことが多いです。
(ただし、視力や聴力は月単位・週単位で悪くなることがあるため、準緊急的に対応することもあります)
ところが、顔面痙攣(片側顔面痙攣)の場合には大分話が異なります。
なにせ、脳外科の他の病気と異なり、命に関わるものではありません。
(運転中にバックミラーが見づらくなったり、片目が完全に閉じてしまって遠近感がつかめなかったりするなど、間接的に危なくなることはあります)
疲れ目で起こるまぶたのピクツキ(眼瞼ミオキミア)は自分も時々経験しますが、あれだけでも自分の中で鬱陶しく感じます。
それを考えると、起きてる間は頻繁に顔面が痙攣しているというのは、ストレスでしょう。
しかしながら、繰り返しになりますが、「命に関わる病気ではない」ところが、他の脳外科の病気とは違うのです。
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SNSでも顔面痙攣の話を書いていたりするので、顔面痙攣の患者さんが受診されて、手術するかどうか迷っている、と相談を受けることがありますし、ボトックス中の方で「手術の話も聞きたい」と紹介いただくこともしばしばあります。
通り一辺倒ですが、顔面痙攣に対する治療方法(抗てんかん薬、ボトックス、手術)の長所・短所の話をさせていただき、ご本人に判断いただくよりほかありません。
(この人の顔面痙攣は結構強めだな)と思っても、原則としては、
「手術すれば良くなると思います」
とは伝えますが、
こちらから「手術しましょう!」ということは、控えるようにしています。
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片側顔面痙攣に対する脳微小血管減圧術は定型手術(手順が決まっている手術)です。
体型によっては後頭部を見上げる角度が取りづらいせいで手術がやや難しいとか、稀に静脈洞の走行パターンがちょうど術野を隠すタイプで、治療困難ということがあります。
とはいえ、出血量も20mlも出ないことがほとんどで、硬膜の内側では視野を妨げる赤血球の無い、脳外科で一番美しい大好きな手術でもあります。

ただし、手術なのでリスクはあって、同じ側の耳が聞こえなくなってしまうリスクもあります(1%未満、100件に1件未満)し、延髄の近くの手術なので、大トラブルがあると生命に関わる合併症や、人工呼吸器が外せない、意識が戻らないなどの合併症が起こりうる場所なのです。
そういう内容を説明させていただいて、
「そんな怖いこと言ってても、大丈夫なんでしょ?」
と言って、手術を受けて下さる方も多いですし、手術を選択された方には当然最善を尽くしています。
しかし、ときどき
「私はどうしたらいいんでしょう?」
と仰る方については、この病気についてはこちらから「手術しましょう」には、ならないんです。
上手く説明できませんが、”手術する/しない”を自分で決められない程度にしか困っていないなら、そんな元の生活に戻れないようなリスクを負わなくいいでしょうし、「一緒に頑張りましょう!!」というパッションが沸きにくい、というか、どこか物足りない感覚を覚えることも正直あります。
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未破裂動脈瘤や良性脳腫瘍では、こちらから
「これは手術する方が良いです。自分の家族でも絶対手術を勧めます!」
ということはありますが、片側顔面痙攣だけは、そういう感じにはやっぱりならないのではないか、と思っています。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
補足1. まれに、顔面神経の近くに未破裂動脈瘤(椎骨動脈ー後下小脳動脈分岐部動脈瘤)を持っている顔面痙攣の患者さんがいらしたりしますが、動脈瘤のサイズ・形状によっては、動脈瘤の治療の”ついでに”顔面痙攣の治療も行ってくる、ということはあります。
補足2.お一人だけ、「やりましょう!」と手術をお勧めした顔面痙攣の方がいました。80代後半で片目が始終閉じてしまっている方で、(これじゃあ、遠近感無くて転んでしまうよ)と思ってお勧めし、手術を受けていただきました。手術自体は問題無く終わって、10日程度で退院されましたが、顔面痙攣を患っていた期間がかなり長かったこともあって、症状が緩和するのに数年かかったことがあります。症状が無くなる前に寿命が尽きたら目も当てられないと思っていましたが、良くなってきてほっとしたことがあります。


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