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脳動静脈奇形(AVM)の手術

執筆者の写真: 木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

更新日:2023年5月1日

こんなふうにAVM摘出できるようになるんでしょうか ?

AVM (脳動静脈奇形)の手術の後に、担当医が言っていた。


AVMは頻度の少ない疾患にも関わらず、手術の難易度が高い。

しかも定位的放射線治療というオプションがあったり、ARUBA study以来、出血していない未破裂AVMに対する治療のハードルがかなり高くなっていることもあって、1人の脳外科医が経験する数というのはかなり限られる。


とはいっても、出血発症のAVMというのは、血管障害をやっていると遭遇する機会はあるので、その時にどうすればいいのだろう、という疑問もあるだろう。


AVMの手術といえば、2007年の橋本信夫先生(前京大教授)論文とビデオ(Neurosurgey)が我々世代のスタンダードというか目指すべき手術と目され、周りのドクターも見学に行っていた。


脳動静脈奇形, 手術
脳動静脈奇形(キャスト) Neurosurgery. 2007 Jul;61(1 Suppl):375-87

ちなみにビデオを編集したドクターが「あれは上手に見えるように編集したんだよ」というのを聞いたのはつい数年前のことだ。


巷間言われるようにAVMの手術の要諦は

  1. 十分広い開頭(とそのための皮膚切開)

  2. 脳溝・脳裂の広い開放

  3. 「疑わしきは罰す」で、どんどんfeederを一時遮断し、それを本体に近づけていく

  4. drainer周囲の剝離と境界の確認

  5. gliosisでの剝離

  6. loopになっている赤虫血管の追跡・温存

  7. 一番奥で脳室から向かってくるfeederの処理

と、全然まとまっていないが、beautiful operationのためには、これらを全て満たす必要がある。

しかも大きいAVMになると、単純に剝離面積が広くなるため、結構難しい(けど単純な)操作を広範囲に行う必要がある。


ただ、前半(1~4)は普通の脳槽の手術なので、動脈瘤の手術ができるようになれば概ねできる。


脳組織とAVM nidusの剝離は難しいところがあるが、出血を止めなければ廃人か死亡、という状況なら、少し大回りして切除範囲を設定してlobectomyすればよいし、そうするしかないだろう。

Goelの手術ビデオを見て思ったが、AVMのほとんどは生まれつきあって、AVMに血流を長年盗られているため、周りの組織はgliosis以上に広い範囲で機能していないのだろう。

そのため、出血発症のAVMでは、出血の大きさから想像されるより回復が良いことも多々ある。


*******************

とにかく、Learning curve登りはじめの若者としてできることとしては、手の動きの精度を高めて、道具の持ち替えが素早くできるようにすること。

その結果、脳溝・脳槽にかける時間・労力を減らして開けられる (1~4) ようにすることではないだろうか。

(卓上型顕微鏡での練習はこの目的でも有効だと思う。)


そこで時間を取られると、誰がやっても結構時間がかかるnidusの剝離を任せるには、人生は…というか、勤務時間は短いのだ。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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