こんなふうにAVM摘出できるようになるんでしょうか ?
AVM (脳動静脈奇形)の手術の後に、担当医が言っていた。
AVMは頻度の少ない疾患にも関わらず、手術の難易度が高い。
しかも定位的放射線治療というオプションがあったり、ARUBA study以来、出血していない未破裂AVMに対する治療のハードルがかなり高くなっていることもあって、1人の脳外科医が経験する数というのはかなり限られる。
とはいっても、出血発症のAVMというのは、血管障害をやっていると遭遇する機会はあるので、その時にどうすればいいのだろう、という疑問もあるだろう。
AVMの手術といえば、2007年の橋本信夫先生(前京大教授)論文とビデオ(Neurosurgey)が我々世代のスタンダードというか目指すべき手術と目され、周りのドクターも見学に行っていた。

ちなみにビデオを編集したドクターが「あれは上手に見えるように編集したんだよ」というのを聞いたのはつい数年前のことだ。
巷間言われるようにAVMの手術の要諦は
十分広い開頭(とそのための皮膚切開)
脳溝・脳裂の広い開放
「疑わしきは罰す」で、どんどんfeederを一時遮断し、それを本体に近づけていく
drainer周囲の剝離と境界の確認
gliosisでの剝離
loopになっている赤虫血管の追跡・温存
一番奥で脳室から向かってくるfeederの処理
と、全然まとまっていないが、beautiful operationのためには、これらを全て満たす必要がある。
しかも大きいAVMになると、単純に剝離面積が広くなるため、結構難しい(けど単純な)操作を広範囲に行う必要がある。
ただ、前半(1~4)は普通の脳槽の手術なので、動脈瘤の手術ができるようになれば概ねできる。
脳組織とAVM nidusの剝離は難しいところがあるが、出血を止めなければ廃人か死亡、という状況なら、少し大回りして切除範囲を設定してlobectomyすればよいし、そうするしかないだろう。
Goelの手術ビデオを見て思ったが、AVMのほとんどは生まれつきあって、AVMに血流を長年盗られているため、周りの組織はgliosis以上に広い範囲で機能していないのだろう。
そのため、出血発症のAVMでは、出血の大きさから想像されるより回復が良いことも多々ある。
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とにかく、Learning curve登りはじめの若者としてできることとしては、手の動きの精度を高めて、道具の持ち替えが素早くできるようにすること。
その結果、脳溝・脳槽にかける時間・労力を減らして開けられる (1~4) ようにすることではないだろうか。
(卓上型顕微鏡での練習はこの目的でも有効だと思う。)
そこで時間を取られると、誰がやっても結構時間がかかるnidusの剝離を任せるには、人生は…というか、勤務時間は短いのだ。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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