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  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

利き手と手術アプローチ

更新日:2019年3月24日

前交通動脈瘤はアタマの真ん中にできるため、昔は(2000年代前半くらいまでは)手術アプローチに関する議論が活発に行われていたように思う。


今は血管内手術もあるし、前交通動脈は半球間裂アプローチと決めてやっている医師もいるので、あまり盛り上がらないテーマである。


しかし、どういう因子がアプローチ法を決めていたかに関しては、割と他の手術にも応用、というか敷衍できることがあるのではないかと思うので振り返ってみた。


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1. 非優位半球

多くの人は右利きで、言語中枢が左側にあるので、「傷んでも大丈夫な(ことが多い)」右側からアプローチする。

以前はpterional approachの際は、同側の直回を吸い取って動脈瘤を露出することも多く、この操作をルーチンで行っている医師もたくさんいた。

(因みにHelsinki大学に見学に行ったときも、当時はルーチンで削っているようだった)


これは、自分が患者だったら(少なくともルーチンでやられるのは)絶対嫌だなと思う操作であり、最初に教わったのも正常構造は全て温存という方針だったので、結局「患者さんの優位半球(か否か)も判断に入れる場合もあるんだな」という認識だった。


ただし、半球間裂アプローチでは、もし軟膜などのダメージが起こるのなら、右側に限られるように気を付けるという点では、確かに影響を受けている。


2. 既にダメージがある側

これは原則的に「」で、くも膜下出血で、上記の直回や前頭葉が既に破壊されている時や、別の病気なりケガなどでどちらかの前頭葉に傷が付いている場合、傷のある側からアクセスするのが原則だ。

(シャント手術などで脳室にチューブを挿入するのも同じ)

これは手術で全く傷が付いていないと思っても、空気に触れるだけでもストレスだと思った方がよい。


3.動脈瘤が見やすい側

2. が無いのであればこれが一番大事なのではないかと思うけれど、古典的にはA2が開いている側からアプローチする、というのが動脈瘤を確実に処理する上で重要だと思う。

この点で、半球間裂は前交通動脈周囲の構造を丸裸にするという点では、やはりメリットが大きい。


4. 動脈瘤頚部の高さ

pterional approachでは高い動脈瘤には対応しにくい場合がある。

Oribtotomyを追加するなどすることで上方へのアクセスが拡大出来る場合もあるが、半球間裂を分ける手間とどちらを取るか、というところ。


5. 動脈瘤の育っている向き

後方向きや上方向きの前交通動脈瘤は、pterional approachでは動脈瘤の全貌を観察し、クリップをかけるのに手前の反回動脈などが邪魔になることがあるため、半球間裂アプローチの方が与しやすいことが多い。


6.動脈瘤の大きさ

大きい動脈瘤の場合、pterional approachでは奥側の血管が見えにくいことがあるため、全貌が見える半球間裂アプローチが良い。

但しくも膜下出血の場合には、近位血管をどう確保するか、ということが問題になる。


7. A1が太い方

心臓側をまず確保していざというとき(出血したとき)に備える、というのが血管外科の基本だ。

特にくも膜下出血の場合には、動脈瘤の全貌が顕わになる前に動脈瘤から出血すると、大惨事になりうるため、心臓側を早期に確保できる側からアクセスするというのは理にかなっている。


8. 術者の利き手

以前は、右利きの術者が左pterional approachで行う場合には前頭側の開頭をやや大きめにする、と教科書にも書いてあったように思う。


今は術者の利き手でアプローチサイドを決めることはあまりと思う。


しかし一般論として、自分の「利き手がどういう風に動かせるか」まで検討して、開頭範囲を決定するというスタンスは参考になると思った。

つまり、腫瘍でも一番深部で重要な操作を行う際に、自分の手、あるいは器械がどのように動くかを具体的にイメージして、アクセス経路、開頭範囲を考えることが重要だろう。


(今回は、この1節(8)を書こうと思ったのだが、そういえば色々な因子が挙げられていたのを思い出した。)



(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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