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  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

アルガトロバンってどうなの?

更新日:2018年8月15日

先日読んだ「健康の経済学」

医療費を減らそうと思ったら、無駄な薬を減らすことを考えるべき、というところで、

「効果が?な薬」としてあげられていたアルガトロバン。


その「効果はどうなの?」という論文。

Stroke. 2016 Feb;47(2):471-6.


DPCデータからICD-10コード(I633) (atherothrombotic stroke)の病名がついて入院になっている患者を抽出。

同一病名で複数回入院になっているケースなどは初回入院のみを対象としたり、他院からの紹介は除外したりと整理した上で、性別や重症度(modified Rankin Scale)などの患者背景を揃えて(propensity score matching)、アルガトロバン使用群とコントロール群に分けて、退院時の重症度、及び出血性合併症の評価をしている。


59,294人のデータから入院中に抗血小板薬が処方された(アテローム血栓性脳梗塞に対する治療)43,078人を抽出し、11,428人のコントロールと9,552人のアルガトロバン使用群をmatchingして、背景を揃えた2,289人ずつで評価している。


その結果、出血性合併症にはコントロール群とアルガトロバン群で差が無かった。

脳梗塞,アルガトロバン,アテローム血栓性脳梗塞
退院時のmodified Rankin Scale


一方、退院時の重症度に関しても、両群で差はなかった…


つまり、論文では「合併症に関して差はなく、安全に使用できるが、急性期アテローム血栓性脳梗塞後の早期の転帰には影響がなかった」と大人な(?)表現をしているが、結局、害はないけど効いていなかったということ。


discussionでも述べられているが、この研究では、急性期脳卒中の予後判断は3ヶ月後の重症度で評価することが多いが、DPCデータは入院データのみであるため、3ヶ月待てば差が出るのかもしれない。

(両群とも同様に評価していて、退院時に差がなくて3ヶ月目で差が出るとは考えにくいが。)


因みに脳卒中ガイドライン(2015)では、急性期脳梗塞に対するアルガトロバンの使用はgrade B (行うよう勧められる)である。


アルガトロバンと言えば、開始2日間は24時間持続投与で、その後は1日2回投与という変則的な使用方法で保険適応になっており、脳卒中内科界隈の一部では、この切り替えの時期に濃度が下がるのが問題では!!といった熱い議論もなされていたようだが、結局どうなったのだろう。

もしかすると、投与方法を変えると差が出るのかもしれないが、おそらくその可能性は低いのではないか。


*******************


アルガトロバンはジェネリックが使用可能となっているが、結局、口から飲み込める人にとっては、急性期はaspirinとclopidogrel2種類の内服というのが、一番”エビデンスのある”治療であって、これ以外の治療法というのは結局、ローカルネタにしかならないのかもしれない。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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