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  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

禍いの科学

何ヶ月か前に日経新聞の書評で紹介されていた『禍いの科学』


脳外科

「世界を変えた101の発明」に触発されて、現代社会にも悪影響を及ぼしている7つの発明を紹介している。

「これより他に選ぶべきものがあるのでは?」という疑問はあるが、どの発明も、中学や高校で学んだ内容を深堀りしていて、物語としても面白い。


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その中のロボトミー手術についての物語は、職業的には気になるところであったが、少なくとも今から見ると”いい加減な”手術が許されたのは、CTも無い時代で、精神疾患に有効な治療がほとんど無かったことが影響しているだろう。

患者の家族としても、それこそ"藁をもつかむ"思いだったに違いない。


しかし、最初のスペインからの報告から、すでに手術の効果を過剰に評価し、合併症を過小に報告していたのが、広く行われるようになっても同じように報告され、結果的に被害が広がっている。

1950年代までの話なので、仕方ないといえば仕方ないのだろうが、現在の(手術)症例報告でもそのような悪影響を及ぼす可能性があり、やはり(合併症への言及を含めた)真摯な態度が必要だろう。


ロボトミー自体は既に、ホラーや漫画のネタに過ぎないように思われ、果たしてこれが現代社会にも影響を与えているのか?という疑問はある。

しかし、ローズマリー・ケネディ(ケネディ元大統領の妹)までロボトミー手術を受けており、うまい話や、手っ取り早い解決法を提案された場合には、一歩立ち止まって考える方がよい、という点では教訓になるかもしれない。

(一方で、中くらいのサイズの未破裂脳動脈瘤で悩んでいる患者さんと話すときに、「そんなに悩むくらいなら、手術する方が絶対手っ取り早いし、QOLが上がるはずなのに」と思うこともあるが)


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著者は最終章で、これらの発明とその被害から得られる7つの教訓を挙げている。

  • データが全て

  • 全てのものには代償があり、ただ一つの問題はその代償の大きさだけだ。

  • 用心することにも用心が必要etc.

「用心することにも用心が必要」では健康診断の話も出てくる。

PSAやマモグラフィなど、どれくらいの人が本当に助かっているかを見ても、なかなかデータ通りに理解して納得するのは難しいだろうな。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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