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  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

「貧乏人の経済学」

今年のノーベル経済学賞を受賞した、マサチューセッツ工科大学(MIT)のエステル・デュフロ教授とアビジット・バナジー教授の一般向け(?)の著作














開発援助においても実証実験によるデータを元に、援助することが重要ということだと思うが、それが実際の事例とともに書かれている。


開発援助といえば、途上国であばらが浮き出てお腹だけぽっこり出た飢餓に苦しむ子供、というイメージを抱いてしまうのだが、そのような「 貧乏な人々を門切り型の束に還元しようとしう衝動は、貧困が存在するのと同じくらい昔から」あると指摘する。


そのようなステレオタイプに当てはめて、ドカンと援助する、あるいは「自助が大事」と放っておくのではなく、もっとミクロに見るといろいろなことが分かってくるということだが、その内容が興味深い。


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たとえば、上記のように「貧困といえば飢餓」と思ってしまうのだが、実際には1日99セント以下で暮らす人々のほとんどは、餓死寸前とは思えない行動をとっている。


たとえば「貧しい18ヶ国の地方にすむ極貧層は、全消費額の36%-79%しか食べ物に使いません。都市でも53-74%です。」

「しかも残金全てが多の必需品に使われているわけでもありません。アルコール、煙草、そしてお祭りへの支出を完全にやめれば、食費はあと3割増やせます。

「(食事の内容をもっとバランス良く、たとえば鉄分を取るなどすれば、もっと働いて生産額を上げられることが分かっているにしても) 食事を変えろという部外者を、人はあまり信用しません。たぶん自分が食べているものが気に入っているからでしょう。

自分の外来を受診される軽症の糖尿病の方や、降圧薬を飲んでいるがもう少し痩せられれば絶対10mmHgくらい血圧下がるはずなのに、という方でも、小さなコストを先送りし、将来の自分に負担させたがるというのは、万国共通なのだ。


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「開発途上国の貧乏な人々が、おそらくメンツを失いたくないという強迫観念もあって、結婚式、持参金、先例式などに大金を使っていることはあちこちでたっぷり報告されています。」


それだけでなく、

「『いや、だってテレビは食べ物より大事でしょ』

一般的に、貧乏な人々が生活を退屈から救ってくれるものを最優先しているのは明らかです。」


貧乏な人たちも、 「他のみんなと比べて合理性に劣るわけでもありません−その反対。まさに持ち物があまりに少ないからこそ、彼らは選択をきわめて慎重に考えることが多いのです。」


本邦でも生活保護を受けている人がパチンコで浪費していると叩かれたりするが、そういう人たちも背屈から救ってくれるものを最優先しているのだろう。


ひとの考えること、というか行動原理は大体どこでも同じようなものなのだ。


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)



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