この炎天下、高校野球(と観戦)で熱中症というニュースが出ているが、Medical Tribuneで取り上げられていた論文。
Wilderness Environ Med. 2018 Jun;29(2):185-193.2018 Mar 14. Comparison of Sports Drink Versus Oral Rehydration Solution During Exercise in the Heat.Schleh MW, Dumke CL.
炎天下で運動する際、スポーツドリンク(Gatorade Thirst Quencher)と経口補水液(DripDrop) のどちらが体液の減少を防げるかという論文。
日本で考えると、ポカリスエットとOS-1のどちらがいいでしょう?ということだろう。
スポーツドリンクと経口補水液では、そもそも使用目的が違うので、ナトリウム濃度やカロリーが異なる。
しかし、運動しなくても、お腹の調子が悪くて脱水気味なときにOS-1を飲むかというと、手に入りやすさも影響するけれど、多くの場合はポカリスエットなどのスポーツドリンクを飲むのではないだろうか。
この研究では、消防士の防火服を着込ませて、39度、30%の温室で一定強度の運動(ランニングマシン)をさせるというもの。
その前後で裸で体重を量り、かいた汗の1.5倍量のスポーツドリンクもしくは経口補水液を飲んでもらい、体重の変化・尿量・血液の濃さを測定した。
結論としてはスポーツドリンクと経口補水液のどちらも統計学的に有意な差はなく、どちらを飲んでも変わりはないということだった。
あまりこの手の若者を診察することはなく、高齢の方の熱中症だとどっちがよいだろう?と思って読んでみたのがきっかけであるが、研究の対象が180cm、80kg超の”physically fit”な若者だったので、フレイルな高齢の方にそのまま応用できる話ではなかった。
しかも、水分の摂取は「一気に飲む」という条件なので、ますます応用できない話。
ホメオスタシスが保たれている人なら、スポーツドリンクと経口補水液の差程度は全くの誤差ということだろう。
そうでないご高齢の方は、手間でも、トイレが近くなっても、スポドリでも経口補水液でもちびちび飲んでいただくのが、この夏を乗り切るためには必要と考えられる。
ただし、Introductionで、Na+が入っている方が、体液として蓄えることが出来るのに加え、水を飲むことを促す作用があるとのこと。ただの水よりはナトリウムの入ったスポーツドリンクや経口補水液を飲む方が良いだろう。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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