この研究については、バイパス手術をやっている脳外科医をおおいに落胆させたが、生存曲線から「手術の成績が悪すぎる(自分たちがやれば、そんな成績にはならない!!)」という批判が出た。
この批判に答える?論文
J Neurosurg. 2013 Oct;119(4):988-95. doi: 10.3171/2013.6.JNS13312. Epub 2013 Aug 2.
Investigating the mechanisms of perioperative ischemic stroke in the Carotid Occlusion SurgeryStudy.
Reynolds MR, Grubb RL Jr, Clarke WR, Powers WJ, Zipfel GJ, Adams HP Jr, Derdeyn CP; Carotid Occlusion Surgery Study Investigators.
バイパスがちゃんと繋がっていた割合は、術後1ヶ月以内に脳梗塞を起こしたグループで92%(11/12,一人閉塞)、最後の受診時に84%(2人閉塞)。
86%の脳梗塞はバイパスと関係しない梗塞だった、と。
まず1番目だけで噴飯ものではあるのだが、平均遮断時間(バイパスのために繋ぐ先の血流を止めている時間)が54.3 ± 23.5分。(脳梗塞なしのグループでも45.4 ± 24.2 分( p = 0.2で差が無いと)
…医者3年目に、最初に患者さんの血管を縫わせていただいたときの遮断時間が54分だったのを思い出した(二人目は24分) 。なので「よくそのレベルの技術で、こんな影響力の大きい研究(調査)に参加しようと思ったな!!」というレベル。
しかも、術後に起こった脳梗塞の写真を見ると、これもひどい。
明らかにレシピエント(繋いだ先の血管)の脳梗塞以外の患者さんも「吻合部に血栓ができて流れたのでは?」という脳梗塞とか、「遮断時間が長すぎたらこうなるよ」という過灌流。
こんなことが続けて起これば、いくら鈍感な外科医でも「この手術は危ない!やってはいけない!!」となるよ、そりゃ。
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もう亡くなった師匠から、「バイパスは遮断時間20分切るようでなければ実用的とは言えない」と教わったし、最速10分で繋げると豪語するDr.もいるなか、平均遮断時間54分とかありえないように思われる。
10分で縫える人がいるところを54分かかるというのは、どこかに致命的な問題があると考えるのが合理的だろう。
(ちなみに自分の、この前採用になった緊急STA-MCAバイパスのシリーズでは18.5 (±3.6)分)
関西の有名な病院では、ネズミの頚動脈を縫う練習して「遮断時間45分くらいで縫えればいい」という基準でやっているところもあるらしい。
しかし、中大脳動脈閉塞で、逆行性の血流がある状態ならともかく、順行性の血流を止めて45分も経過すれば、(側副血行路の発達具合によるが)合併症は避けられないだろう。
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一方、「このレベルのバイパス手術では、適切な患者さんを選んでも、内科的治療に勝てない」ということが分かったとも言える。
「日本の脳外科医がやれば、このような結果にはならない」と自分も思ってしまうが、日本の脳外科医のレベルもピンキリであり、個別の脳外科医が「日本人だからできる」というものでもない。
学会の偉い人が「COSSの結果を日本にそのまま当てはめるのは適切ではない」と言ったとしても、その結果を、個別の脳外科医が自分の成績のように解釈できるものでもない。
あくまで自分の成績を考えて手術を考えましょう。
手術の適応は外科医次第(堤一生)
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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