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  • 執筆者の写真木村 俊運 @ 日本赤十字社医療センター

COSSの手術群

更新日:2022年1月19日



この研究については、バイパス手術をやっている脳外科医をおおいに落胆させたが、生存曲線から「手術の成績が悪すぎる(自分たちがやれば、そんな成績にはならない!!)」という批判が出た。


この批判に答える?論文


J Neurosurg. 2013 Oct;119(4):988-95. doi: 10.3171/2013.6.JNS13312. Epub 2013 Aug 2.


  1. バイパスがちゃんと繋がっていた割合は、術後1ヶ月以内に脳梗塞を起こしたグループで92%(11/12,一人閉塞)、最後の受診時に84%(2人閉塞)。

  2. 86%の脳梗塞はバイパスと関係しない梗塞だった、と。


まず1番目だけで噴飯ものではあるのだが、平均遮断時間(バイパスのために繋ぐ先の血流を止めている時間)が54.3 ± 23.5分。(脳梗塞なしのグループでも45.4 ± 24.2 分( p = 0.2で差が無いと)


…医者3年目に、最初に患者さんの血管を縫わせていただいたときの遮断時間が54分だったのを思い出した(二人目は24分) 。なので「よくそのレベルの技術で、こんな影響力の大きい研究(調査)に参加しようと思ったな!!」というレベル。


しかも、術後に起こった脳梗塞の写真を見ると、これもひどい。


EC-ICバイパス,STA-MCAバイパス
遮断時間が長いとこういうことも起こる例

明らかにレシピエント(繋いだ先の血管)の脳梗塞以外の患者さんも「吻合部に血栓ができて流れたのでは?」という脳梗塞とか、「遮断時間が長すぎたらこうなるよ」という過灌流。

こんなことが続けて起これば、いくら鈍感な外科医でも「この手術は危ない!やってはいけない!!」となるよ、そりゃ。


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もう亡くなった師匠から、「バイパスは遮断時間20分切るようでなければ実用的とは言えない」と教わったし、最速10分で繋げると豪語するDr.もいるなか、平均遮断時間54分とかありえないように思われる。


10分で縫える人がいるところを54分かかるというのは、どこかに致命的な問題があると考えるのが合理的だろう。

(ちなみに自分の、この前採用になった緊急STA-MCAバイパスのシリーズでは18.5 (±3.6)分)


関西の有名な病院では、ネズミの頚動脈を縫う練習して「遮断時間45分くらいで縫えればいい」という基準でやっているところもあるらしい。

しかし、中大脳動脈閉塞で、逆行性の血流がある状態ならともかく、順行性の血流を止めて45分も経過すれば、(側副血行路の発達具合によるが)合併症は避けられないだろう。


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一方、「このレベルのバイパス手術では、適切な患者さんを選んでも、内科的治療に勝てない」ということが分かったとも言える。


「日本の脳外科医がやれば、このような結果にはならない」と自分も思ってしまうが、日本の脳外科医のレベルもピンキリであり、個別の脳外科医が「日本人だからできる」というものでもない。

学会の偉い人が「COSSの結果を日本にそのまま当てはめるのは適切ではない」と言ったとしても、その結果を、個別の脳外科医が自分の成績のように解釈できるものでもない。


あくまで自分の成績を考えて手術を考えましょう。

手術の適応は外科医次第(堤一生)


(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)

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