「脳外科の手術って、頭蓋骨をパカッと外すんでしょ? 怖いわー」
と、外来で手術の説明を行う際によく聞かれるし、非医療者の友人と食事に行ってもそういうことを聞かれることがある。
確かに脳は頭蓋骨に囲まれているため、手術で病巣に到達するためには頭蓋骨の一部を切り取って”間口”、というかアクセス経路を作る必要がある。
つまり、頭蓋骨の一部をいったん切り取る必要がある。
”パカッと”と言われると、パカッとではあるが、おそらく上のようにおっしゃる方が考えているのは、下のような”パカッ”ではないだろうか?
この有名な図は、解剖学者のVesaliusの図譜のもので、現在でも病理解剖では、上の図のように頭の丸い部分を切り外して観察することになる。
しかし脳外科の手術では、さすがにこのような形で骨を外すことはない。
それなりの頻度で行われている手術で、一番大きく頭蓋骨を切り取るのは、外傷などによる減圧手術だ。そして稀ではあるものの両側を開くことになると、かなり”パカッ”感が出てくる。
また巨大な髄膜腫のように、もともとの発生部分を切り取る必要がある場合には、発生部分の面積分の開頭が必要になるため、かなり大きなものになることはある。
ただ、その他の手術では、一部の例外を除き、せいぜい5,6cm程度の間口ということがほとんどではないだろうか。
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大きく開頭するとワーキングスペースが広くなるというメリットはあるが、あまり大きくなりすぎると、脳が重力で変形するため、かえって操作性が悪くなることもある。
(プリンが大きくなると、だんだんプリンらしい形を保てなくなるのと似ている。)
なので、おそらく開頭自体は、患者さんや家族の方が思っているほどは、”大がかりな”処置ではないと思っている部分がある。
ただ、その一方で、自分がもし”切られる側”だったら、やっぱり怖いかもと思うので、あくまで”こういう感じです”という話。
因みに、切り離した骨は、傷を閉じる前に元の位置に戻して、チタン製のプレートなどで固定し、見た目の問題ができるだけ起こらないようにします。
(文中意見に係る部分はすべて筆者の個人的見解である。)
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